2011年10月18日

JAB2011一般演題発表報告

10月15・16日に早稲田大学で行われた第23回日本生命倫理学会年次大会において、
本会BSNの一部研究会のメンバーで、下記内容を一般演題として発表いたしました。

会場では有益なご質問やご指導を多く頂き、今後のBSNの恒常的な研究テーマとしても
さらに継続させていきたいと考えております。


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iモード 日本における事前指示の現状と将来的展望
   ― 認知症ケア提供者を対象としたアンケート調査から ―


演者: 川上祐美・空閑厚樹・角田ますみ・前川健一・
     河原直人・足立智孝・窪田共和・箕岡真子
     (バイオエシックスを考える会(Bioethics Study Network))

キーワード: 事前指示 自己決定 自律 認知症 終末期ケア


【発表要旨】
 本研究の構成員が所属する「バイオエシックスを考える会(Bioethics Study Network)」は、1994年の日本生命倫理学会第6回年次大会での「学生セッション」で発表した学生を中心に、当年次大会の大会長を務めた木村利人教授(当時、早稲田大学教授)の提案を受けて発足した「バイオエシックスを考える学生の会」を前身とする有志の研究会である。
 バイオエシックスにおいて重要な概念である「自律(autonomy)」、および「自己決定」については、バイオエシックスの誕生以来、多くの議論の積み重ねがあるが、今回、本研究会内の有志で協働して、日本における事前指示の現状について調査し、現在の課題を検討することとなった。

 日常のケアにおいては、ケア提供者の認知症の人々の尊厳や自律に対する認識によって、認知症の人々が 「一人の人間」 としていかに生を全うしうるかということにおおいに関係してくるものと思われる。日本の臨床でも、告知およびインフォームド・コンセントの実践という形で、患者の自己決定が次第に確立されるようになってはきたものの、意思能力が次第に低下していき、その後意思能力を喪失していく認知症の人々における自律については、十分な考察がなされていない。また、認知症の半数以上を占めるアルツハイマー病の終末期には、嚥下困難が起こり、延命治療である人工的水分栄養補給が本人の意思を確認することなく、かなりの割合で実施されているという現状がある。
 このような認知症の人々の自律を尊重するためには、終末期ケアに関する事前指示の作成が重要であると考えられるが、現状では認知症を発症する可能性のある本人はおろか、そのケアにあたる医療者や介護者にも、認知症終末期ケアに関する事前指示の認知度は十分でない。
 しかしその一方で、事前指示書“FIVE WISHES”を参考に日本の現状に相応しく作成された『私の四つのお願い』(箕岡真子著)が出版されるなど、一般の人々が書店の店頭で事前指示書を手にとることができるようになり、事前指示の普及も新たな段階に入りつつあると言える。

 そこで本発表では、認知症ケアにかかわる人々を対象に、事前指示の認知度およびそれに対する賛否、今後の普及の可能性と問題点についての意見など、質問紙による調査を試み、その結果について分析・発表を行う。
 なお本研究会では、今後、日常ケアや生活における自己決定と、その延長にある終末期をめぐる自己決定との位置づけをどのようにしていくか、また当事者をとりまく環境や人間関係のあり方などに着目し、どのようにすればよりよい事前指示作成に結びつくかなど、日本の現状に添う事前指示のあり方について検討していく予定である。さらに、市民運動としての事前指示普及活動と、事前指示作成やその尊重をめぐる文化的背景や臨床的課題などについても、学際的に考察していきたいと考えている。
(以上、年次大会予稿集より転載)


posted by BSN事務局 at 00:06| Comment(0) | ■ その他企画・関連情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする