人を対象とする研究の倫理原則・規制の現況
■日時: 2003年5月11日(日) 午後2時〜
■場所: 早稲田大学西早稲田キャンパス14号館804号室
(アクセス: http://www.waseda.ac.jp/koho/guide/nisiw.html)
■講師: 栗原 千絵子 先生
■演題: 「人を対象とする研究の倫理原則・規制の現況」
■報告要旨:
人を対象とする医学研究の倫理原則として最も広く知られるのは、世界医師会による「ヘルシンキ宣言」である。これは、第二次大戦中のナチスによる非人道的な人体実験に協力した医師を裁くニュルンベルク医師裁判の判決文に示された「ニュルンベルク綱領」を淵源とする。アメリカ、フランスなどでは、拘束力の弱い倫理原則だけではなく、人を対象とする研究の被験者の人権・安全を守るためのルールが法制化されてきた。他の先進諸国では、包括的規範が無くとも、職業団体の自主ルールが実効ある規制となっている国もある。
一方日本においては、包括的な制度整備が行わないまま、先端医療研究の推進に伴い行政主導の指針が個別に告示され、相互に適用範囲が不明瞭で矛盾を含んでいる。
医薬品承認申請のための臨床試験である「治験」に適用されるGCPのみが、申請書類の整備のための包括的規制の役割を果たしてきた。このような現状への共通認識に基づいて、人を対象とする研究の規範のあり方を議論したい。
【講師略歴】
栗原 千絵子 (本名・斉尾千絵子)
1959年東京生れ。1982年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。その後、出版社勤務、演劇活動などを経て、1994年より臨床評価刊行会/コントローラー委員会において、臨床試験をめぐる言論・研究活動に従事。著書『15歳のこころ』(風涛社刊)、訳書『EBMの道具箱』(中山書店)。